金田んち

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散歩

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梅雨が明けるか明けないかくらいの、ちょうど今くらいの夜の散歩が俺は好きだ。

あの日は花火大会だった。

父親と母親、俺と弟の家族4人揃って花火大会に出かけた。

お祭りの日は好き、でも人ごみはちょっと苦手、という俺の面倒な性質は思い起こすとどうも母親譲りなんだと思う。

その花火大会は河川敷で開催されていて、大通りに面した河川敷側には露店がずらっと並び、浴衣を着たおねぇさんや甚平を着たおにぃさん、俺たちと同じような家族連れがたくさんいたんだと思う。

俺たち家族は賑わっているのとは反対側の、花火が打ちあがるまでは夏の虫の声も聞こえるような、人通りが少なく落ち着いた場所に座っていた。

俺たちが座っている側には露店がないため、母親は家を出る前に家族分のおにぎりを握り、ウインナーを焼き玉子を巻いた。それを対岸で賑わう人だかりを眺めながら「花火楽しみやねぇ」なんて会話を交わしながら頬張ったんだろう。さすがに会話の内容までは覚えてはいないが。

そんなのんびりとした時間を過ごすうち、花火大会開催のアナウンスが辺りを包む。

俺たち兄弟にとっては初めての待ちに待った花火大会。

それまでは夏の風物詩といえば、ばぁちゃんの家の軒先でやる手持ちの花火だったのだが、この日は空に打ちあがる花火に大きく胸を膨らませていた。

パンッ

ヒュリュ~~~~

ドンッ

パリパリパリパリ

それまで見たこともない金色の花火が夕暮れと夕闇の間の空に散った。

続きまして~~

「始まるよ~」

母親の声。

「今花火上がったよ?」

「今のは開始の合図。ここからが本番。」

ドンドンドンドン

バババッバッババッババッバッバババッババッババッバババ

「!!!!!!!!!!」

予想以上の爆音にタマゲタ。

そして予想外の重低音が内臓を刺激してきたことでうう”~となった。

正直本番1発目からとっととおうちに帰りたくなったが、弟がいるという兄の面目を保たねばなるまい。

「(弟に)恐くないか?」

「面白い」

目を輝かせてやがる。この時ばかりは弟をぶん殴って恐いと言わせようとさえ思った。

結局恐怖の爆音バリバリ花火を最後まで見たが当時は全っ然楽しくなかった。

その帰り道、眠った弟を父親がおぶって、母親と俺と父親が並んで自宅までの3キロくらいの道のりを歩いた。

当時は父親や母親にかまって貰って一緒に遊んだという経験が乏しかった。いや、花火大会そのものも遊びに連れて行ってもらったようなものなのだが、そこには恐怖しか転がってなかったからあっちのほうに置いてきた。

まぁそんな中でゆっくりと、たかが3キロくらいの距離でも一緒に歩いた思い出というのは今でも俺の思い出には強く残っている。

ちょうど今の時期のような、ジメッとした空気が全身に張り付くような、昼間のように車の通りが多くなく自由に家族で道いっぱいに使える時間。それでいて時々、窓から光がこぼれる家からは話し声なんかが聞こえるような時間帯。

そんな時間帯や季節の思い出が俺の中に幸せだった記憶として残っているのだろう、今でもこの時期の夜の散歩が俺は好きだ。

昼間のように車の音が邪魔をしないから虫の声が聞こえ、道路は誰も通らないから思いのままに歩ける。そんな時間帯のこの季節の散歩が好き。

でももしかすると、今となっては1人の時間というのを散歩で感じているのかも。そして、家に帰り着くと嫁と子どもたちの寝息で家族を感じる。そのギャップを感じたいのかもしれない。

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