金田んち

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IKEAに行って感じたことなど

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この前IKEAに行きました。これで人生2回目。我が人生に一片の悔いなしです。
さて今回は、IKEAが福岡に進出して間もない頃だった前回よりも、若干落ち着いた感じはあったものの、やっぱり家具屋としては異常としか言いようのない客の多さでした。あの客の数だけで言えばSCです。田舎の人はこぞって集うと噂されてるイオンのような客の多さ。

ある程度の期間を過ぎてもこれだけ人が集まるってことは、そこには何かしら理由があるんだろうなと思って色々観察はしたんですけど、たぶん俺が感じた「これだろう」みたいなのは既出のものであると思います。

ただ嫁がIKEAからの帰りに呟いた「楽しかった」という余韻は、客に対してIKEAの売り場演出効果などが効果的に作用してるんだろうなと実感しました。
あそこはそもそも家具屋じゃなく、客に対しIKEAという空間を提供するために作り上げられた施設であって、「楽しみ」の要素は異なるまでも、外の世界とは完全に区切られたディズニーランドのような異常空間です。

あとは蛇足です。

IKEAの何が異常か。

まずは価格が異常です。うちにも前回行ったときに買ったIKEAのダイニングテーブルがあるんですけど、その価格からするとちょっと考えられないくらい造りがしっかりしてますし、収納も多くて実用面でも申し分ありません。
あそこに売ってる家具全般的に言えることなんだとおもいますけど、デザイン、実用性、そして造り、そういう家具の総合力と値札を見比べた時、「安すぎる」と言うしか他に言葉が見当たらないくらいの商品ラインナップになってます。

大量生産大量販売、組み立て式による輸送コストの削減、そして自社デザイナーさえもIKEAの信者として囲い込むことで、家具でいちばんコストのかかりそうなデザイン部分を極限まで削る。そしてかかったコストに対して儲けだけをプラスした価格で販売。

ただ「安い」だけの家具ならニッセンなんかでも組み立て式の家具販売なんかをやってるんですけども、IKEAのものとニッセンのものを並べた時には一目瞭然です。まったく質感とか安定感とかが違うので、結果的に同じ価格であってもひとつひとつの商品に対する満足感に天地の差が出てくる。


次に会社があるスウェーデンのイメージとして強く前面に押し出されている「北欧」。
「北欧」といえば福祉国家とか幸福度ランキング上位者というような要素があるためか、なぜか「北欧」と聞いただけでエキゾチシズム感じるような不思議な地域です。さらに、家具でいえば「北欧風」というだけで憧れの対象になる。強力な商品力がありながら、さらに「北欧」というイメージをもって強化ができる。ここまで徹底されると他の家具屋はたまらないでしょう。


次に入口から出口まで決められた順路で進まなければいけない、あえて客の自由を奪っているシステムです。一見すると、客が目当ての商品売り場になかなかたどり着けない悪い構造のようにも見えます。
しかし客の生活のすべてに侵食したい、IKEA信者を増産したい店にとって、全ての商品を強制的に見せて触れさせる構造はこれ以外にないのではないでしょうか。ただそれをやるには、自社商品とその魅せ方への強い自信がなければなかなか出来るものではないと思います。

そして実際に商品が魅せられてる売り場ですが、これはもはや売り場とは言えないような異次元空間です。基本的にはメインとなるソファーだったりベッドだったりが各コーナーに置かれています。ただ普通の家具屋ならそのメインとなる家具だけをずらっと並べているだけなのですが、IKEAの場合はその家具を使ったら部屋はこういう風になるんだというショールームに重きを置いている印象です。

IKEAの強みには確かに「北欧風」という憧れのイメージはあります。でも、どうやったら部屋の中に、さらに生活そのものの中に遊び心を生み出せるのかということを、売り場を通して教えてくれるというのもあると思うんです。
そのために普通はデッドスペースになってしまいがちな上空を上手く使ったり、無機質になってしまいがちな壁に収納機能やウォールステッカーなんかで手軽に柄を与えたりと、生活の中で生じがちな余白を遊び心で埋めるようなコーディネートが多いのかなと。


つぎに従業員の業務。IKEA以外の家具屋だと、商品はきちんと商品棚に陳列されてます。なので、従業員は在庫管理や陳列に対する知識なども学ばないといけないと思うけれど、IKEAの場合は陳列棚なんて存在しません。客は従業員の作り上げたショールームで欲しい商品の番号をメモり、順路の最後にあるやたら馬鹿でかい在庫置き場からメモした商品を探しだすシステムですから。
なので従業員はどうやったら魅力を伝えられるのかという売り場の演出に力を注ぐことができるし、さらには人件費の削減にもつながる。

そしてそこで浮いた経費は価格に転嫁し、低価格実現のために「イケアにできること」「お客様にできること」というアピールもされてる。これには単なる説明だけでなく、客をイケア信者として取り込む意図も大いにあるんだと思う。もう隅々までぬかりがないです。


最後に。
IKEAの魅力って、価格とは釣り合わないデザインなんかの商品力というのに間違いないと思うんですけど、これまで敬遠されてきたとも思われる少し客に負担をかけるというのが受け入れられる時代になったんじゃないかなと思います。
この前嫁がツイッターを見てた時に面白いって言ってたある夫婦の会話なんですけど
夫「なんでマフラー編んでるの?安くて売ってる店あったから買ったらいいじゃん」
妻「じゃあ、あんたは完成品のガンプラを飾って眺めて満足するんだね」
夫「すみません。続けてください」
ってのがあったんですけど、消費者は何かを手に入れる時の、ある程度の負担って「楽しみ」として捉えだしたんじゃないかなぁと思います。

だからイオンなんかで買い物する時にも買い物客に負担をかける「セルフレジ」って結構な順番待ちの列ができてるんですけど、そんな光景も、なんとなく納得できるような気がするんです。