金田んち

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うるさいお遊戯会

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家に帰る。飯を食らう。そこから息子とのお遊戯の時間が始まる。

「とーちゃん」
「ん?」

息子は日を増すごとに幼児化していってるんじゃないのかというくらい近頃は甘えん坊になった。

「ぴよーん、しよ」

もう14キロ超えの体重なのに、最近息子が大好きなのは俺に抱っこからの空中に放り投げられる遊び。漬物石を投げ飛ばすようなものである。

なので息子を天井に向かって放り投げる瞬間、俺の腰は「ふんぎぃ」と食いしばった悲鳴をあげるが、そんことなど息子には無関係。

「えー、ぴよーんきついって」

そう拒否しようもんなら半べそ顔を向けながら

「びよん!びよん!!びよん!!!」

地獄からの叫び声のように、声を荒げ全精力を声に乗せて訴えてくる。

「あーわかった、わかった。1回だけね」

息子の請求力に観念した俺は息子のわきに手を添え、吹き出そうになる屁を我慢しつつ「ふんっ」と踏ん張り息子を書き抱える。そして「ふんぎぃ」と泣き叫ぶ俺の腰にバシッと鞭を打ち、息子を天井へと投げ上げる。

重力に逆らう息子の背中では見えない羽が元気に動き、表情はどこかに飛んでいきそうにフワフワと柔らかい。

俺はその表情をみ続ていたいがために、放り投げては掴む遊びを何度も…繰り返せはしない。

「よーし、終わり」

1回だけという口約束が子どもに通じるはずもなく

「もーいっかい、もーいっかい!ぴよーん、ぴよーーん!」

傷入りコンパクトディスクのように繰り返す息子。その声が鬱陶しげな嫁の怪しい雲行きを感じた俺は、咄嗟に大きく間違った解決策を思いつく。

息子飛びたい→飛ばせよう
俺抱くと腰がヤバイ→抱くのはよそう
そうだ!一緒に飛ぼう!!!

おもむろに目の前に差し出された俺の両手に戸惑う息子。説明しても無駄なことは百も承知な俺は
「ほら」
とだけ言葉をかけて息子の両手を握る。

「せーの」
俺と息子は2人仲良くおててを繋ぎ、その場でビヨンビヨンと跳ね出した。

子どもの状況把握能力や適応力は凄まじく、瞬時にどんなお遊戯会をやっているのかが解り、表情はみるみる崩れていく。

「びよん!びよん!」
嬉しさでカラフルになった息子のびよん!びよん!の声。

その声色が、その表情が、俺の表情をも崩し、たちまち2人は自分達だけのパラレルワールドに羽ばたいた。

びよん!びよん!あはは、あはは

2人の背中には柔らかな羽が生え、お花畑の真ん中で軽やかに宙を舞う。パラレルワールドにはもはや重力など存在しなーい。

カッ、チン

「かーちゃん、あはは、ぴよーん、ぴよ」

うるさーーい!!!

逆転裁判!!敗訴確定!!!!

裁判長嫁の判決が下った瞬間、俺と息子の羽はちぎり取られ、さっきまで辺りに広がっていた花畑は荒野と化した。
暖かくそよいでいたはずの暖房の風も、張り詰めた空気の中では頭を冷やす。

息子と飛び跳ね出した途端、もくもくと膨らむ積乱雲に、俺は気づかなかった。

…ごめん。
……まさか飛び跳ねたらうるさいなんて。
………だって親が教えてくれなかったから。

その場しのぎの下手な言い訳が頭を過るも口を塞ぐ。

「すみませんでした」

「静かに飛びなさい」

「はい」とは言ったものの、どうやれば良いんだろう…

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