金田んち

スマホ表示の読者登録ボタンがどっか行きました。見かけた方はご連絡ください。至急引き取りに伺います。

風邪引いた、嫁はインフルエンザになった

文字サイズ

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

先週の水曜日、久々に熱が出てダウンした。翌日は会議が控えてたこともあって、上司からはその日早退を命じられ、家でゆっくりと眠ったおかげで、翌日にはなんとか出勤出来るくらいには体調が回復した。

嫁は俺が会議でいつもより帰りが遅くなること、あとは俺の体調に気を配ってくれたこともあるかもしれないけど、その日は子供を連れて実家に泊まった。

会議の当日、若干熱っぽくもあるし鼻もつまっているしで体調は万全ではなかったが、会議後の飲み会までほとんど強制的に参加しないといけなかった。何しろ会議の主催者であるし、そのなかでも一番の若手ということで、割り振られる役目は会場設定から雑用、飲み会のお酌までほとんど強制的なのである。

飲み会では刺身やからあげやサラダやもつ鍋が出てきて、普段なら冬なのに汗をかいたビールグラスと良く合う酒の肴なのに、つまった鼻では何を食っても何を飲んでもちっとも旨くなかった。食感と喉越しのみの刺激しか楽しめず、そのためビール2杯くらいとサラダを少々くらいで腹は満足してしまった。もつ鍋も少し食べたが、味の分からないギトギトの温キャベツはとても食えたものじゃなかった。

さらには全くといっていいほど酔えなかったので、周りでテンションの上がったおっさんたちの話もちっとも面白くなく、微妙な愛想笑いに終始した。


飲み会が終わってもまだ8時過ぎだったので、「時間があったら髪切っておいで」と朝の嫁の言葉を思い出した。行きつけ(といってももう1年以上行ってないけど)の美容室に電話をしたら「お呼びしましたが近くにいません」と無機質なレディーが応対してくれた。留守電というヤツだ。
えいくそ!なんで開いてないんだと思ったが、たぶん世の中に24時間営業とかの店が増えすぎたせいで俺の時間間隔が狂っているんだろう。美容師だって8時にもなって客がいなけりゃ家に帰るのが普通である。

仕方なく美容室での散髪は諦め、電車で帰宅する。それでもまだ9時半くらいだったので、また「時間があったら髪切っておいで」との嫁の言葉を思い出す。掃除機とか色んなものがごちゃごちゃに収納された扉を開き、俺は奥まった場所に転げていた伝家の宝刀を取り出した。

翌日、普通に仕事をしていたら嫁から「インフルエンザになった!私が!」という訃報が届いた。マジかよ...俺の体調も万全ではないのに、嫁まで体調を崩してしまったとなるとただ事じゃない。確実に家が荒れる。

家に帰ると、いつも通りに息子が廊下まで走って出てきて迎えてくれた。「おかえりー!!とう・・ちゃ・・ん?」息子は俺が帰宅したことに対する歓喜と、なんか良くわからないものでも見てしまったかのような、複雑に入り混じった視線を俺に向ける。

スーツを脱いで風呂掃除を終わらせ、うがい手洗いを済ませ、リビングのドアを開くとこちら側を向いて座椅子に座る嫁と娘と目があった。
「切ったん?!」
との嫁の言葉に続けとばかりに
「ギヤ――――――!!!!!」
と泣きだし嫁の胸に顔を埋める娘。もういちどこちらを振り返り、俺と目が合うとまた
「ギィヤ―――――!!!!!」
と泣き叫ぶ娘。

どうやらやっちまったらしい。そういえばさっき息子も不思議そうな顔をしていたし、朝方挨拶をした隣の職場のおばちゃんも「うわっ!!」とか言ってたっけ。なんかお化けでも見たように後ずさりしてたような気もする。

会議が終わって家に帰り、俺が自分で散髪出来る範囲といえば「丸坊主」にするくらいだ。そう、伝家の宝刀「バリカン」を使って1年ぶりくらいに頭を丸めた。

完全に失敗したと気づいたのは娘の恐怖に満ちたその表情を見たときだ。嫁は体調が悪い。だから俺がなるべく子供たちのお世話をしたいのだが、タイミング悪く丸坊主にして怖がられている俺が、娘にミルクをやっても抱いても泣き叫んでしまう。

嫁は「そっちの方が良い」って言ってくれるんだけど...

なんやかんや嫁に手伝ってもらって金曜日は乗り越えた。というよりなぜが子供たちはあっさりと寝てくれたので助かった。

問題は翌日の土曜日。動き回りたい息子を公園とかで遊ばせ、怖がる娘になんとかミルクとか飲ませ、子供たちとギャーギャー格闘しながら飯の準備・・など、息子の隣に横になって目のまわりそうな一日を想像していたら眠ってしまった。

翌朝、まだ日もしっかりと昇ってないくらいの時間に俺の顔面が襲われた。息子の全体重が俺の顔面にのしかかり、腹を使ってぐりぐりやっているらしい。何故かは知らない。鼻は壊れた。たぶん2、3本くらい鼻の骨が持っていかれた。

何にせよ「起きろ」という合図らしい。布団から出る時に、嫁に「食えるか?」と聞くと「普通に食べれる」ということだったので、朝飯を作りに息子とリビングに向かう。

息子のぱっつんぱっつんに膨れ上がったオムツを替え、朝飯の支度をしようと冷蔵庫を覗くと卵と納豆があったのでそれでおかずを作ることにした。

お椀に卵を2つ割り、めんつゆを加えてフライパンに薄くのばし、半分くらい固まったところに納豆を伸ばしてくるくる巻いていく。お手軽なのにちょっと凝ったよ♪と少しはカッコつく納豆オムレツ?卵焼きの完成である。
あとは息子が食べやすいよう細く切って、息子のご飯はラップを使ってくるくると巻き寿司のように伸ばし小さく切ると、子供でも一口で食べられる簡単おにぎりの完成。

食卓に朝飯を並べ、嫁と娘を起こしてさあ、朝飯だ!としたところで俺と娘の目が合う。
「ギヤ――――――!!」
娘は相変わらず泣き出す。何日経てば坊主頭の俺を父親であると認識してくれるのだろう...というか、今日一日大丈夫なのか、こんな状態で。

俺の嫌な予感は的中し、娘は俺がミルクを与えても抱っこしても一向に泣き止まず、体を逸らして逃げようと必死である。
見かねた嫁に「娘ちゃんだけなら面倒見るから、息子ちゃんお願い」と言われ、この日は俺が息子の面倒担当、嫁が娘の面倒を担当することになった。

申し訳ねぇ。体調よろしくないのに、俺が坊主にしたもんだから...たぶん娘には俺が人さらいかなんかに見えてるんだ...なさけねぇ。

そろそろ時間切れだ。本番はこれからだと言うのに…今日はここまで。