金田んち

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子どもの啓発みたいなタイトルの本がキライ

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この前、夜ご飯の買い物ついでにショッピングセンターの本屋に行った。タイトルを忘れたけど、嫁はずっと買い続けてる漫画の新刊を、息子にも最近興味を示しだした童話を買いに。

俺は特に買いたいものを決めてなかったけど、小説が並んだコーナーを見てたら面白そうなものをいくつか見つけたので衝動買いした。ちなみに今は他に読んでる小説があるので、その時買ったものには一つもまだ手をつけてない。

俺は人から借りた本は必ず目を通すのに、自分で買った本は読まずに放置してしまうものが結構ある。なんでだろう。

まぁいい。子どもの本を選んでいたら、嫁が1冊の本を手に取って「これどう?」と薦めてきた。それは「にほんのお話し」というタイトルのもので、日本でつくられた童話が20作くらい収録されているものだった。

息子に今読み聞かせてるのは「せかいのお話し」というもので、たぶん嫁が手に取ったものとはシリーズものなんだろう。そっちには「三びきのこぶた」とか「おおきなかぶ」とか、俺でも良く知ってる世界中の童話が収録されてる。

息子はその中の「三びきのこぶた」と「おお様の耳はロバの耳」が好きみたいで、毎日毎日「読んで」と言ってくる。なんで繰り返し読んでるのに飽きないのか不思議だ。

今回嫁が薦めてきた「にほんのお話し」の話に戻るけど、目次を見てみると、おなじく俺でも良くしってる「ももたろう」とかが並んでた。

嫁が手に取った「にほんのお話し」の隣には、タイトルはたぶん一緒だと思うけど、シリーズものの「にほんのお話し」が並んでたので、そっちの収録作品も見てみた。

その時嫁は、自分の目的の漫画を探しに行ってたので、俺だけがそれを見てた。

嫁が知らないほうの「にほんのお話し」には、俺が知らないタイトルの作品が多く、特に興味をそそられたのが「へっぷりよめご」というタイトルの作品で、俺は自分が読んでみたいという欲求からそっちの本を買おうと決めた。鬼のいぬま、というほど鬼嫁でもないけど、嫁が知らないうちに勝手に。

それから俺は自分が読みたい小説を何冊か選んで、それと一緒に勝手に選んだ本を嫁に手渡して会計を任せた。
本の体裁は似ているし、本を取り換えたことなんて何も知らない嫁は会計を済ませた。

車に乗って嫁は自分の買った漫画を買い物袋から出す時に異変に気付いた。
「なんでちがうん?変えたん?」
なんかまずかったか?と思ったが、清まして
「そっちのほうが知らん話ばっかで面白そうやった」
と答えた。

目次を見た嫁は「ほんと、知らん話ばっかり」と言ったので、おぉ、こいつも知らない話に興味があるんだな、ふむふむと思ってたら
「次は私が選んだのにして!子どもは話を知らんから」
と、ちょっと厳しめの冷気を帯びた言葉をいただいた。

たぶん俺が勝手に嫁が選んだ本をかえたことにちょっと怒ってて、それを伝える時のクッション材として、一応同意のそぶりを見せてくれたんだろう。

俺が知ってる童話なら、おそらくみんな知ってるってくらい有名なものだ。言われて気がついたけど、そんな世代を超えて読み継がれるベストセラーみたいな話を、自分が知ってるという理由で読んであげないというのはちょっとおかしい。
むしろ積極的に読んであげるべきで、嫌いでもないのに読まない理由なんてないんだ。
ごめん、子ども。ごめん、嫁。


話はもどるけど、息子の本を選んでいる時、「せかいのお話し」や「にほんのお話し」が並んだ本棚に「想像力がつくお話し(だったと思う)」っていうタイトルがあった。

なんだこれって気になったので目次を見てみると、日本とか世界の括りがないだけで、ふつうに童話が20作くらい収録されてるものだった。

「にほんのお話し」とか「せかいのお話し」とはシリーズものなんだろうけど、なんかそのタイトルだけはイヤな気持ちになった。

読書をすれば子どもの想像力がつく。まぁ間違いではないと思う。それに「にほんのお話し」とか「せかいのお話し」ってタイトルのものよりは注目を惹きやすいタイトルだと思う。
けど自宅の本棚にそれが並んでて、ちょっと子どもが大きくなってタイトルを目にした時、親はなんて言うんだろう。
「あんたに想像力をつけさせるために、その本を読み聞かせた」
とでも言うんだろうか。
「あんたの想像力が豊かなのはその本のおかげ」
とでも言うんだろうか。

絶対そういうつもりでタイトルをつけたわけじゃないってことは分かってるんだけど、子どもが読むものに、なんか親の願望を塗りつけたような、こどもの自己啓発本みたいなタイトルは正直ウザい。
本も売れなきゃいけないから、少しでも親の目を惹くタイトルにしたかったんだとは思うけど、それが透けて見えると拒絶したくなる。

本を読んだ時の効果として、想像力がつくとか読解力がつくっていうのはあると思う。でもそれ以前に、本を読んで「楽しむ」ってところが重要なんじゃないかと俺は思う。

その「楽しみ」が、このタイトルをつけるだけで台無しにされたように俺は感じる。本を開いて物語を楽しむ前に、想像力とか発想力とか、読書の効果ばっかり気にしてるってなんか嫌だ。

何かを食べる理由には「栄養を摂る」ことも重要だけど、俺は「美味しい」っていう理由でものを食べたいし選びたい。栄養価を気にするならサプリをカロリーメイトで流し込む。
自然を見れば「視力が回復する」かもしれないけど、ただその自然を眺めるのが好きだから眺めたい。視力回復が望みならレーシック手術をうける。

副次的な効果なんて、子ども向けの本で紹介してくれなくて全然かまわない。読書による効果とか、それが育児に与える影響とか、そういうのは育児関連とかのコーナーだけで紹介してもらいたい。

息子に「とうちゃん、この本何?」って聞かれて「頭がよくなる本」って教えたくないし「頭がよくなる本よんで」って言われたくもない。

想像力も発想力もつかなくたって構わないから、俺は子どもには単純に話を好きになってほしいし、物語を楽しんでほしい。子ども向けの本には、それしか望んでない。