金田んち

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家族を繋いでるのは嫁

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家族。俺と嫁と息子と娘。そして俺と嫁の両親、子どものじじばばを繋げてくれるのは嫁だと思う。

息子は早いもんで、もう2歳半くらいになった。ときどき意味不明な言葉をしゃべることもあるけど、両親やじじばばの言葉はこちらが思っている以上に理解してるし、考えてることを察する能力もかなり発達してきてると思う。

息子に対して俺が出張で家に帰らないことを喋ってないのに、それを察していつも以上にすり寄ってきたり、俺や嫁の雰囲気の変化からおこられそうなことを読み取って大人しくなったり、逆にその雰囲気を拭い去るように大声をだしたりする。

そんな息子の成長を見てて、息子が想像以上に「分かる」んだと「分かって」から、昔よりも叱る機会が増えた。俺もそうだし嫁もそう。じじばばはかなり甘いのでほとんど叱らない。

で、この前息子に歯磨きをさせるために、俺が洗面所に連れて行って、歯磨きを持たせて「あっちでしておいで」とリビングに向かわせた。寒かったし、自分で歯磨きをさせた後、仕上げ磨きを俺か嫁がするために。

洗面所で仕上げ磨きも出来るんだけど、立ったままだと口の中が良く見えないので、うちでは息子の頭を膝にのせるかたちであおむけに寝かせ、電気の光で口の中が見えやすいような体勢で仕上げ磨きをやってる。それで、リビングに向かわせた。

いつもどおり、のつもりだった。

息子は俺から受け取った歯ブラシを口にくわえ、いつも自分が座って歯を磨く定位置に向かって歩いていた。俺は自分の歯ブラシに歯磨き粉をのせて、リビングに向かうところだった。

「いっつもダメって言いようやろ!!!何回言ったら分かると!!!」

突然嫁の怒声が響いた。

何事かと思うと同時に、息子が泣きはじめた。

俺はてっきり「叱られた」から息子が泣きはじめたと思って、そんなに強く言わなくても...と思いながらリビングに入ると,息子が何かに躓いたのか膝をついていた。

「歯磨きが喉に刺さったらどうすると!!声出らんくなるんよ!!もう泣けんのよ!!喋れんのよ!!なんで分からんのね!!!」

ものすごい剣幕で息子を叱る嫁の言葉を聞いた。俺はそんなことまで考えが至らずに、何も考えず息子に歯ブラシを渡して歩かせていた自分を責めたくなった。

俺は、息子がリビングに行く途中で転ぶなんてことを少しも想像してなかった。むしろ「ダメ」と叱る嫁に、細かいことばっか言わなくても、とか思ってた。

今回はたまたま転んだだけで済んだけど、もしかしたら本当に歯ブラシが喉をついて、息子の声は一生失われてたかもしれないという想像が巡って、怖くなって、そんなことも想像できなかった自分をぶん殴りたくなった。

出来ることなら怒らずに、とか、平穏な雰囲気で過ごしたいとか、そんなことばっか考えて、本当に考えなきゃいけないことを考えて子どもと接してた嫁の言動を煩わしいとも思ってた。

俺が息子を叱る時なんて、今その時点で言うことを聞かないとか、そんな表面的なことばかりで、全然先のことなんて考えてないって気づいた。

嫁から叱られた息子は、嫁の言葉を理解したんだと思う。なぜ歩きながら歯ブラシを口に咥えたらだめなのかってことを。いつもなら叱られた後不機嫌そうにしたり、叱られても素直にやめなかったりするけど、それが危険なことだって分かったから、泣きもせず嫁の言葉を聞いて、それからは絶対定位置に座るまで歯ブラシを咥えなくなった。

俺だって息子が歯ブラシを咥えながら歩く姿は何回も何十回も見た。でも、息子がそんな危険に遭う想像なんて出来なかった。ただその場が過ぎれば良いっていう考えしか持ってなかった。
嫁は、それからさらに一歩進んだところまで考えてて、だからいつも口酸っぱく息子を叱ってる。
いつも子供のことを考えてる。

3月になって、息子はまた保育園に行けるようになった。

去年の秋ごろ、嫁の休暇が産後休暇から育児休暇にうつったことで、息子は保育園に行けなくなってた。
3月になって、慣らし保育的な意味合いだったと思うけど、また行けるようになった。

登園初日、保育園に向かう車で息子は「行きたくない」と駄々をこね泣いたらしいし、保育園でも午前中泣き続け、昼ごはんも食べなかったので保育園から帰されたらしい。
その日仕事から帰ると、今にも溢れそうなくらいの涙を堪えた嫁と、今日は楽しくなかった、と言いたげな息子が「おかえり」と迎えてくれた。
そこでその日の事情を聞いた俺は、息子と「明日はお昼ごはんまで頑張ろう」と約束をしたら、嫁は少し安心したみたいだった。

次の日、昼ごはんが終わる時間に迎えに行くと、きちんとご飯を食べていたらしく、俺が仕事から帰ると、「ちゃんと約束守れたよ!!」と嫁が嬉しそうに報告してくれた。

それからだんだんと保育園で過ごせる時間が長くなって、今日、嫁が息子を保育園に送った後で、「今日は全く泣かずに保育園行けました。帰ったらいっぱい褒めてあげてね」と報告メールを送ってくれた。

もちろん自分でも息子を褒めるとは思うけど、嫁は自分が叱ったり怒ったりっていう、子どもから嫌われる役をきちんとこなす。だからって自分だけじゃなく、俺やじじばばにも子供を叱ってくれ、そんな役も担ってくれなんてことを言わないどころか、褒める役割を積極的に与えてくれる。

たぶんそれは俺が今気づいてる部分よりももっと多量に、俺やじじばばには子どもたちを「褒める」役を与えてくれてる。
子どもたちと過ごす時間が長い嫁しか知らない「褒める」要素を共有してくれるから、俺やじじばばは子供のことを過ごした時間以上にずっと良く知れるし、たぶん子供からは好かれやすい。好かれやすいから良い関係も保てるんだと思う。

だから俺は思う。嫁が俺たち家族を繋げてくれてる太いパイプなんだって。