純白な笑顔、ブラックな笑顔

先週友達の結婚式が岡山駅にほど近い会場であった。いやぁあのはにかんだ新郎新婦の純粋な笑顔は何度見てもくすぐったいものですね。

高校では同じテニス部でかなり濃い時間を共にした友達で、今でも年に数回は顔を合わせてる友達なんだけど、当日の主役は披露宴でおさらばという運びだった。
つまり、2次回をやりたいやつは勝手にどうぞと放牧状態になったなかよし部員連中は、駅付近で2次回の会場を探した。

披露宴が終わったのは14時30分ごろだったので、わりと都会である岡山駅周辺でも居酒屋が見つからなかったので、ジョイカラ（だったと思う）で夕方まで時間を潰すことにした。

まぁ酔った状態での男だらけ7人のカラオケなので、開始当初はももクロやら鬼龍院ではしゃぐものの、30分も経てば吐くは寝るわでSEKAINOOWARI状態。
ただここのカラオケ屋のコスパは凄く良くて、7人2時間フリードリンク付き（アルコール数種類含む）で1人600円くらい。会計で合計金額言われたんだけど、4千円台だったのでガチで1人ですか？って聞いてしまった。岡山以外にもあるかもしれないんだけど、ダベってちょこっと飲むだけならジョイカラはマジでオススメです。

んで、5時近くになったので、そろそろ居酒屋に移動しようかという流れになり、まぁ酔って瀕死状態の人もいることだし近くで居酒屋を探したら、ほとんど隣接したような場所に見覚えのある居酒屋の看板を見つけました。
看板に営業時間が5時からって書かれてたんですけど、その時5時まで10分もなかったので、入れてくれるんじゃね？みたいな淡い期待の元入店すると、片言の日本語を話す好青年が「いらっしゃいませ！どうぞ！」と招いてくれたんでお言葉に甘えて入店しました。

これ不思議なんですけど、ついさっきまで酔いつぶれてた数人も、店を変えると見事に復活してるんですよね。しかも誰よりも元気が良い。
んで、仕切り直しとばかりに生7杯と、しかしながらガッツリした食べもんは入らないので、酒の肴に選んだのは出し巻き卵とキムチと漬物盛り合わせ。

無茶苦茶おっさん臭いですけど27歳の男の集まりなんて実はこんなつつましやかなもんですからね。

さてそれから10分ほど経過するも、手元には何も届きません。今日の結婚式はどうだった、次は誰の番かみたいな余興のネタもそこをつき、俺たちの注文忘れられたんじゃね？呼んでみるかと呼び鈴を鳴らしたとほぼ同時に、お待たせしましたと7杯の生ビールがやってきました。
良きかな良きかなと本日何度目か分からない乾杯をして、生ビールをチビチビと飲む7人のおっさん。
もうこんだけ飲み続けてるといくら表面上体力が回復してるように見えても酔いは覚めてなく、グイグイとはいけない。それに7人の小人なんて可愛い俗称は口が裂けても言えないくらいのおっさん集団。

んでいくらオッさんといっても、酒の肴くあいは欲しいわけですよ。出し巻き卵とキムチと漬物盛り合わせが。
しかし飲めど暮らせど出てこないの。30分くらい。

だから膀胱が痺れを切らしてトイレに立ったんですけど、トイレまでの道中で見たのはこの世の現実でした。

俺たちを営業時間前から快く迎えてくれた片言の店員が、他の何組かのお客さんを含め全て1人で店を回してた。

実際あるんですね。ブラック企業。
あまりに注文した食べ物が出てこないんで、あの店員ちゃんと聞き取れてなかったんじゃないのかとか悪口言ってたんですけどごめんなさい。

トイレから戻って程なくして、注文してた食べ物が届き「すみません、卵焼くのに時間がかかってしまって」って言ってた。笑顔で。出し巻き卵頼んだはずなのに味なかったけど良いよそんなこと。忙しすぎて大事なこと忘れてたとか良くあることだし。

しかしね、無理でしょうよ。注文から飲み物提供から調理まで全て1人でこなすって。
まがいなりにもかなりの乗降客数のある岡山駅前に店出してんだよ？辺鄙など田舎のほとんど人の往来のない店で、かつ夕方5時ならそんな従業員数で対応できるかもしれないけどさ。

わりとブラック企業って騒がれてるし、そういうのがあるのは知ってはいたんだけど、今まで利用客の立場としてブラックな実態ってのを経験したことがなかったからかなり驚いた。その場にいる7人のおっさんみんなでね。
それと、俺はやるせない思いもあったな。ブラック企業を利用しなければ、いずれそんな会社は滅びて働く人は幸せになるって思ってたんだけど、ブラックな企業のほとんどは有名な会社なんだよね。んで、特に知らない土地に踏み入れた場合、やっぱ頼るところって自分の知ってる有名な店なんだよ。結局ブラックな企業を使ってしまう。

んでつくづく思った。この店員の死んだ笑顔を生きた笑顔に変えることって、俺には出来そうもないと。