息子はイヤイヤ期
最近息子がイヤイヤ期に突入してしまったようである。
特に嫁の言うことにはことごとく反発しているようで、飯を食えと言ってもイヤと言い、出かけるぞと言ってもイヤと言い、風呂もトイレもことごとくイヤと言うらしい。
息子は幼児の頃からしっこをしても泣かない子であったが、うんこには敏感で、俺にも嫁にも出そうになると「うんこ」と宣言してうんこをしていた。
それが最近では、俺がいない状況になると、こっそりとうんこをして、ただやっちまったうんこが太ももの付け根にこびりついてしまうのはイヤなようで、うんこをやっちまったことが嫁にバレないように平然を装いつつ、しかしなるべくケツの動きを最小限にとどめるような不自然な歩き方をするらしい。
下痢をした時にアナル付近をトイレットペーパーで拭きすぎて、摩擦で擦れたそこがケツの谷間同士の摩擦で擦れることを避けるような、あのなんとも情けのない歩き方である。
その不自然な歩き方に気がついた嫁がウンコした?と息子に尋ねても、嫁が言うことには何でもイヤと答えたい息子は
「してない」
と答えるらしい。
嫁がウンコをしたことに気づいてない時にも、あらかじめ先手を打つように
「してない」
と何の前触れもなくその反発語を発するのだそうだ。
息子はもう生後2年を過ぎ、何ヶ月か前には頻繁に自分からトイレに行きたいと言うようになっていた。こりゃほとんど手をかけずにトイレトレーニングも終了だと思っていたのだが…
トイレだけでなく、基本的に自発的に成長していく手のかからない良い子なのだが、イヤイヤ期に突入してしまったがためにその態度は急変した。
なんと今まで尿意を催したら「しっこ!トイレ」と訴えていたのが、全くその言葉を発さなくなってしまった。しかも、あろうことか息子の息子はオシッコの湿り気により荒れ、オシッコをする度に痛みを感じるようになったらしい。
そこで嫁と嫁の母親(息子のばぁちゃん)が痛くならんようにオシッコって言いなさいと言い聞かせるのだが、如何せんイヤイヤ機で、しかも何気に頑固な息子は「言わん」と言い張るらしい。まったく困ったものである。
そんな時は俺の出番になるわけだが、闇雲に「オッシッコと言いなさい!!」と烈火の如く怒っても息子には何も伝わらないだろう。
そこで俺がやっているのは、母ちゃんの目の届かない息子と二人きりになれる場面で諭すことである。
具体的には息子が尿意をほぼ100%催す風呂場で、男同士裸の付き合いをしながら「ちんちん痛くならんように母ちゃんに言わなぞ」と茶化しながらも何度も諭すのである。
そんな場で言うのは理由があって、俺と嫁の2人から責められる場であれば、俺の茶化しは嫁には不快だろうし、かと言って息子を怒鳴りつけてこっ酷く叱るようなものでもない気がするからだ。要するに息子と俺の2人きりの場であれば、互いに互いが受け止めやすい距離感で話が出来ると俺は思っているからだ。
もちろん何でもかんでもそんな状況に持ち込むわけではない。誰かを傷つけただとか、約束を守らなかっただとか、そんな状況においては嫁が言って聞かなければその場で俺も息子を叱る。しかも嫁よりもキツく叱る。
そんな時息子は行き場をなくし泣くのだが、その時は嫁が息子の理解者みたいな立場になって「一緒に謝ろう」と言って息子を諭し、俺は何がいけなかったのかを説明する。
これが果たして教育としてどうなのかは分からないが、怒られる時でさえも逃げ道や寄り添える場所というのを何処かに用意してあげないと、やっぱり聞き入れるのではなく従うという関係になるんじゃないかと俺は思っている。
今やっていることが逃げ道を用意してあげられているとは言えないかもしれないし、これこそただ単純に言うことには従わせていることにすぎないかもしれない。
でもただただ頭ごなしに叱る、怒るという選択は少なからずやっていない、と俺は思っている。
「○○ちゃん良い子ね、よし、これ出来るね。良い子やもんね」
俺が小さい頃親から言われ続けたこんな言葉が嫌いなんだ。逃げ場がない。規定された「良い子」に従うしかないそんな言葉、それだけは使いたくないと思っている。
良い子じゃなくてもいいから、一人一人と向き合うんだ。