金田んち

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どーでもいいaskの自動質問

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相変わらず無機質で漠然としていて、まったく意図するところの掴めないことを毎日質問してくるaskの自動質問。ほんとどーでもいい。

ただ漠然としている質問のせいなのか、たまに「そういえばなんでだっけ」とか、俺ってそれについてどう考えているんだっけ、というような、改めて自分の考えと向き合うきっかけを与えてくれたりする。

たぶんそんな自動質問には「俺」という人格を想定したうえでのものじゃないから、質問の前提条件には「社会人」も「学生」も、「既婚者」も「独身者」も、「男」も「女」も国籍すらも前提条件として存在しない。そんな質問に答えようとするとき、まず俺自身のことについて考え、そんな俺はどう思うのか、みたいな順を辿って答えないといけなくなるから、結果的に自分自身と向き合うことになるんだと思う。

お化粧についてどう思いますか。

今日の質問はこれだった。

お化粧について。
俺の母親は化粧を嫌う人だった。何がそんなに嫌いなのかは聞いたこともないから未だに良くわからないけど、たぶん面倒だとかそういう理由なんだと思ってる。あるいは、母親は祖母に会うたび「もっとちゃんとお化粧しなさい!」と口うるさく言われていたから、祖母に対する反発心から化粧嫌いになっていたのかもしれない。

俺は「勉強しなさい」と言われればやる気を失い、「勉強しなくていい」と言われればナニクソ!とやる気を出すような、わりと天邪鬼な子どもだった(今でもそうかもしれない)ので、もしかすると母親も天邪鬼だから祖母の執拗な言葉に反発してしまう、なんてこともあり得るかも。

何にせよそんな化粧っ気のない母親のもとで育った俺は、授業参観なんかで綺麗に化粧をした友達の母親を見て正直羨ましく感じていたし、なんでうちの親はとりあえず感丸出しの適当な化粧で学校に来るんだとか思ってた。

しかし「慣れ」というのは恐ろしいもだと思う。中学生にもなれば授業参観なんかの行事はなくなったし(あったかもしれないけど母親が来た記憶なんてない)、友達の親を見る機会なんてほとんどなくなった。
すると小学校の頃は「化粧くらいしろよ」なんていう不満を抱えてたはずが、自分の母親が友達に見られる機会がない、俺自身も友達の母親を見る機会がないとなると、母親が化粧しないことについて何も感じなくなった。
むしろ、化粧をしないことが「普通」だと感じるまでになっていた。

女子も化粧禁止の校則がある高校に行ったので、女友達や彼女についても、高校を卒業するまでは化粧なんてやってなかった。中には休みの日に化粧をしてる人もいたかもしれないけど、そもそも女友達は少ないし、部活に熱中していたし金もなかったので、休日にデートなんてそこまで多くは経験してない。
なので、たとえ「彼女」と呼べる存在がいても、その人の顔に化粧が塗られたのを見たのは高校を卒業してからになる。

高校を卒業してから、というより在学中も今の嫁と付き合っていたけど、俺は彼女が化粧をし始めたころにやたらと反発した記憶がある。

「化粧なんてしなくていい」「すっぴんで充分」

とか言ってたと思うけど、そう言ってた理由は化粧しなくても可愛いという、彼女に伝えてたのがメインではなかった。

まだ化粧に不慣れで、単に塗りたくったような化粧(嫁は今そんな化粧を見ると「おてもやん」とか「くちびるオバケ」とか言ってる)が気に食わなかっただけじゃなく、今までの彼女と別の人になったような気がして、遠いところに離れていってしまうような思いになったんだと思う。

サンタクロースな彼は湯の町Flavorという小説に『若い頃は束縛してしまうもんだ』というような記述があった(正確じゃないです)けど、まさにそんな感覚だった。

それまで粧われたこともない彼女の顔が飾られる。たかが化粧なんだけど、見栄を張っただけで実体のない自信しかなく、経験も乏しい高校生の俺にとっては、不安材料として十分だった。
さらに身内にすら普段から化粧する女性のいない俺にとって、化粧する彼女が異常にすら思えたことも影響してると思う。

そんな不安を払拭するために、化粧だけじゃなく自分の価値観なんかで彼女の首を縛りつけ、俺が決めた安全圏から彼女が出て行かないように鎖でつないでた。

後になって振り返るとあの頃は束縛キツかったとか思うし、だから彼女も辛かっただろうと思う。「もっと色んな人とつきあってみたい」って言われて彼女とは別れたけど、実際は俺と一緒にいることが窮屈だったんだと後になって思った。

それから数年後、また彼女とつき合うことになった時「大人になったね」って言われた。
それは昔みたいに束縛しなくなったってことをおおいに含んでたと思う。

でもそれは俺が大人になったんじゃなく、自分の価値観で囲い込まないと離れていってしまうっていう強迫観念みたいなのがなくなったから。
だって実際、彼女とは束縛しなくてもまたつき合うことが出来たから。

化粧については、その頃もう俺は働きだしてて、女性が化粧するのは「普通」になってたし、今でもそうだけどやるもやらぬもお好きにどうぞくらいにしか感じてない。

askの自動質問くらいに、俺にとって化粧はおてもやんだろうとくちびるオバケだろうとどーでもいい。

ただ、俺が死ぬまでは男が化粧しなくて済む世の中のままであってほしい。俺はあんな面倒なものを毎日続けるだけの根気を持ってないから。