金田んち

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断片

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なんとなく書いた。続きを書くかは分からない。


わたしが踏み入れたのは、暗黒としか表しようのないところだった。

目の前に何があるのか、足元に何があるのか。道はあるのか、建物はあるのか。生きているのか、死んでいるのか。何かの生命体がいるのか、何をすればいいのか。何も分からない、只管に暗黒に覆われるだけだった。

何も分からない、しかし、ただじっとしてても仕方ないから、私は少しずつ歩いた。

何かにぶつからないか、何かに躓かないか、何かいないか、光はないか。暗黒の中では、五感のうち一つは何の役にも立たないが、その感覚にすら希望を預け、注意深く神経を疲弊させた。

漆黒のフィルムを纏った魚眼レンズ越しに、ど田舎の夜空を眺めたみたいに、全く定かでない光のようなものが見えた気になった。

生まれたばかりのガチョウの雛のように、正誤も善悪も思想も情緒も無関係に、私はその朧げな光を追った。

光は毎日少しずつ進む。それは前なのか後ろなのか、右なのか左なのか、上なのか下なのか、私には法則のようなものを見出すことが出来なかったが、とにかく毎日少しずつ進んだ。

私はできる限り早く、それでいてもやはり注意深く、光の正体をなんとか確認出来るところまで進んだ。

正体は、生命体の足元を弱々しく照らす光だった。

光源が何なのかはよく分からない。自発的な光なのか、他の何かが関与しているのかも分からない。発光ダイオードみたいなものなのかもしれないし、反射板のようものなのかもしれない。

光を伴った生命体は、何かを拾っているような仕草をすることもあれば、拾うことを戸惑っているような時もある。ある時は何処かに向けて叫ぶようなこともあった。

やはりその生命体も、私のように暗黒の中での不安を感じているのだろうか。あの叫びのようなものは、不安を拭い去るための行為なのだろうか。